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2007年3月23日 (金曜日)

『自衛隊イラク従軍記』

★『自衛隊イラク従軍記』学習研究社 07・3・23                                  ☆正式な書名は「報道できなかった自衛隊イラク従軍記」と長い題名だ。著者は金子貴一氏。著者の本職はフリーのジャーナリストだが、この本のすごいところは自衛隊内部での見聞を記録したことである。なぜそのようなことができたかというと、著者はカイロ・アメリカン大学卒業でアラビア語に堪能。長くアラビア語に関係する仕事を続けてきた経験が物を言って、自衛隊のイラク復興支援部隊に通訳として従事することを要請され、宿営地設営に至る初期の51日間をサマーワで自衛隊員たちと苦楽を共にしたからである。

 イラク・ムサンナ県サマーワにおける陸上自衛隊イラク復興支援部隊の活動をリポートした著作・写真集などは機会があるたびに目を通してきた。その数冊のうちで本書が一番実態を伝えていると思う。他は自衛隊の外側から見たリポートであり、観測、伝聞、憶測が入り交じり活動する人々の実態の伝わり方がいまひとつぼやけていた。本書の特徴は三つある。一つは参加した自衛隊員のナマの声が伝わっていることである。時、所、できごと、雰囲気をさまざまなエピソードを書き連ねることによって伝え、著者の役割や立場あるいは力の及ばない出来事なども書かれている。二つ目は、部族国家と言われるイラクの部族に関する詳述が学術的とも言えるほどで目から鱗である。でも複雑すぎて分からないけど。実際的には自衛隊の復興支援活動に支障を来すほどの大きな影響を与えていたことも理解できる。三つ目は日本人にとってアラブ(イラク)は全くの異文化の地域だとあらためて教えてくれたことである。こういうところに入り込んで目的を遂行することがいかに難しいことであるかよく分かる。これはイラク復興の目的もあるだろうが、日本人が未開の地域に分け入るという探検の要素まで感じてしまう。大きな事はできなかったかもしれないが自衛隊は(つまり日本人は)アメリカやイギリスとは違う手法でイラクの人々のこころに少しは寄り添えたのではないかと考える。

★『牧羊犬シェップ、がんばる。』東京創元社 07・3・31                            ☆夏目漱石作「吾輩は猫である」のアイルランド版のような本である。作者はマージョリー・クォートン。シェップという牧羊犬を書き手として自分と飼い主一家の素朴かつ騒々しい日常を描いている。原題は「one dog,his man and his trials」で日本語題名とまるで違う。

 シェップは日本の犬好きの間でも評判のボーダー・コリー種で賢くかつ活動的な犬である。原題中に「Trials」とあるように牧羊犬としての働きと、その能力を評価する競技会が詳しく説明されており、適度なユーモア、アイルランド共和国の田舎の生活が活写される。そのもとになっているのは務台夏子氏の日本語訳でほんとうに犬が語っているかのような生き生きした文章である。まさに拾いものの本で、なぜ拾いものだと言うかというと、理由は「牧羊犬シェップ、がんばる。」という日本題名にあり、子ども向けという誤解を受けそうで、何とかならなかったかと思う。文章を2、3頁よんで、こりゃ面白そうだと気づく手間がかかって見過ごされる可能性があるからだ。もちろん中学生ぐらいから大人まで楽しめる。特にボーダー・コリーを飼いたいけれど実際には飼えない人々にはボーダー・コリーとの生活を疑似体験できる。アイルランドの田舎の人々のことも大好きになってしまう。その結果困ることは、ほんとうにボーダー・コリーがほしいと思ってしまうことだ。しかし、念のために書くがボーダー・コリーを室内で飼ってはいけない。彼等を不幸にしてはいけない。ボーダー・コリーは緑の牧場にいてはじめてボーダー・コリーなのだ。 

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